6/30/2008

2008年7月3日の加速器研究ゼミ

フィリピンのサンゴ骨格を用いた南シナ海の中期完新世古環境復元
Mid-Holocene South China Sea Paleoceanographic reconstruction using records of corals from the Philippines coast
小林達哉(M2)

 南シナ海は、その地理的位置からアジアモンスーンやエルニーニョ・南方振動(ENSO)のような気候システムの理解を深めるための重要な地域である。  古環境の復元には様々な手法が用いられるが本研究では造礁サンゴの炭酸カルシウム骨格に着目した。サンゴ骨格は高密度と低密度の層からなる年輪を形成しており、この骨格には海水温や塩分といった海洋環境の情報が記録されている。この年輪の成長軸方向に沿って種々の安定同位体比や微量金属元素などの化学分析を行うことにより、高い時間分解能(週~月単位)で海洋環境の復元をすることができる。このためサンゴ骨格には、海底堆積物などでは難しい季節変動を復元することができるという利点がある。

 しかしながら、南シナ海におけるサンゴ骨格を用いた完新世の古環境復元の研究は中国南部における海南島(Sun et al., 2005)など南シナ海北部のみでしか行われていないのが現状である。そこで、本研究では南シナ海東部に位置するフィリピンのルソン島・パラワン島の沿岸部より、現生および中期完新世の化石のハマサンゴを採取し、成長軸に沿う骨格の酸素同位体比とSr/Ca比の分析による水温・塩分変動復元を行って、これらの地域における古海洋環境復元を試みている。

 今回のセミナーでは、分析途中のデータを紹介し、今後の展望を述べたいと思う。

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