2010/011/2 新着論文紹介
☆ Science 29 October 2010 , volume 330☆
1.Large d13C Gradients in the Preindustrial North Atlantic Revealed
Are Olsen and Ulysses Ninnemann
DOI: 10.1126/science.1193769
炭素同位体比は、過去の海水の流れの変化を示す指標として用いられているおり、その詳細は現在の海水中の炭素同位体比を調べることで正しく解釈されている。しかし、現在の海水中のδ13Cは、同位体としては軽い人為起源のCO2の影響を受けている(Suess effect)。本研究では、その影響を補正することで氷期-間氷期の海水中のδ13Cの分布に対するこれまでの知見に訂正を加えた。
2.Rate of Gas Phase Association of Hydroxyl Radical and Nitrogen Dioxide
Andrew K. Mollner, Sivakumaran Valluvadasan, Lin Feng, Matthew K. Sprague,
Mitchio Okumura, Daniel B. Milligan, William J. Bloss, Stanley P. Sander,
Philip T. Martien, Robert A. Harley, Anne B. McCoy, William P. L. Carter
DOI: 10.1126/science.1193030
対流圏におけるヒドロキシル基とNO2の反応は非常に重要であるが、その反応係数は未だ明確になっていない。本研究ではレーザー技術を用いた実験により、ヒドロキシル基とNO2の反応係数に制約を加えた。
☆ Nature 28 October 2010 volume 467☆
3.Deformation of the lowermost mantle from seismic anisotropy
Andy Nowacki, JamesWookey & J-Michael Kendall
doi:10.1038/nature09507
本論文では、沈み込み海洋スラブの物質が核マントル境界に衝突している北米と中米の下層の地震波異方性を、深発地震だけでなく浅発地震も用いて方位の範囲を増やして測定した。その結果、これまで仮定されていた横軸等方性は可能性がなく、より複雑な機構が関与していなければならないことがわかった。
4.The evolution of the marine phosphate reservoir
Noah J. Planavsky, Olivier J. Rouxel, Andrey Bekker, Stefan V. Lalonde, Kurt O. Konhauser, Christopher T. Reinhard & Timothy W. Lyons
doi:10.1038/nature09485
熱水域の遠位堆積物中の鉄とリンの濃度比の時間変化を示すことで、海洋中のリン貯蔵の進化過程を調べた。その結果、750〜635Myrのスノーボールアース氷河期の時期に濃度比のピークがあることから、氷河期後にリン酸塩流入量が増加することにより、有機炭素埋没量が増し、海洋と大気がより酸化環境になったと考えられる。このことが結果的に後生生物の進化のトリガーになった。