7/26/2010

新着論文紹介(2010/7/20)

担当:M1 窪田薫

☆Science (16 July 2010 , volume 329)☆
PERSPECTIVES
The Ongoing Mystery of Sea-Floor Methane
Marc Alperin and Tori Hoehler
DOI: 10.1126/science.1189966
嫌気性メタン酸化菌について。

When Still Waters Ran Deep
Thorsten Kiefer
DOI: 10.1126/science.1192295
岡崎他の明らかにした過去に北太平洋でも沈み込みが起こっていた可能性について。

REPORTS
Simulated Rapid Warming of Abyssal North Pacific Waters
Shuhei Masuda, Toshiyuki Awaji, Nozomi Sugiura, John Philip Matthews, Takahiro Toyoda, Yoshimi Kawai, Toshimasa Doi, Shinya Kouketsu, Hiromichi Igarashi, Katsuro Katsumata, Hiroshi Uchida, Takeshi Kawano, and Masao Fukasawa
Science 16 July 2010: 319-322.
DOI: 10.1126/science.1188703
深層水の温暖化について。モデルによって南極表層水と北太平洋深層水が40年程度の早い時間スケールで相互作用(テレコネクション)することが分かった。

Ocean Warming Slows Coral Growth in the Central Red Sea
Neal E. Cantin, Anne L. Cohen, Kristopher B. Karnauskas, Ann M. Tarrant, Daniel C. McCorkle
DOI: 10.1126/science.1190182
紅海ではSST上昇によるサンゴの骨格形成への影響が出ている。トモグラフィーの観察からDiploastrea helioporaは1998年に比べて30%成長が鈍化していることが分かり、IPCCのシナリオに基づいたモデルシミュレーションと組み合わせると、2070年には成長が完全に停止してしまう可能性が示唆される。

Asymmetric Density Dependence Shapes Species Abundances in a Tropical Tree Community
Liza S. Comita, Helene C. Muller-Landau, Salomón Aguilar, Stephen P. Hubbell
DOI: 10.1126/science.1190772
近くに同種がいると(例えば隣り合う木と木)相互に影響し合い、種の存在量を増やす効果がある。

Chemoattraction to Dimethylsulfoniopropionate Throughout the Marine Microbial Food Web
Justin R. Seymour, Rafel Simó, Tanvir Ahmed, Roman Stocker
DOI: 10.1126/science.1188418
植物プランクトンの形成するジメチルスルホニオプロピオナート(DMSP);(CH3)2S+CH2CH2COO−(硫酸塩エアロゾルを形成し雲を作る主要な過程)について。微生物の生態系における役割の評価。

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☆Nature (15 July 2010 volume 465)☆
AIDS特集

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☆ Nature Geoscience (July 2010, vol.3 No.7)☆
Long-term effectiveness and consequences of carbon dioxide sequestration
Gary Shaffer
doi:10.1038/ngeo896
二酸化炭素固定の将来予測について。モデルによると10万年で固定された場から漏れ出す二酸化炭素の割合は1%/1000年の割合である。

Observations beneath Pine Island Glacier in West Antarctica and implications for its retreat
Adrian Jenkins, Pierre Dutrieux, Stanley S. Jacobs, Stephen D. McPhail, James R. Perrett, Andrew T. Webb & David White
doi:10.1038/ngeo890
西南極氷床が現在観測されている海水準上昇の10%を担っている。棚氷が縮小し接地面が後退しつつあるPine Island 氷河下に自動潜水機を潜らせてみると、暖かい水が隙間を通っていてどんどん氷を溶かしていることが分かった。

Rapid formation of a modern bedrock canyon by a single flood event
Michael P. Lamb & Mark A. Fonstad
doi:10.1038/ngeo894
通常河川は長い年月をかけて大地を削るが、大規模な洪水(地球、火星両方において)によって一気に大地を削ることもありえる。モデルと観測から、テキサスのCanyon Lake Gorgeが2002年の大洪水で石灰岩を3日間で7mも底を削ったことが分かった。

Spatial variability in oceanic redox structure 1.8 billion years ago
Simon W. Poulton, Philip W. Fralick & Donald E. Canfield
doi:10.1038/ngeo889
原生代(2.5-0.542Ga)初期の1.84Gaに縞状鉄鉱床の形成は止まった。これにより海の化学組成が大規模に変化したことが示唆されるがまだよく分かっていない。北アメリカにおいて鉄と硫黄の酸化還元状態を復元したところ、表層水は酸素に満ちていたが、中層水は岸から100kmに渡って無酸素であったことが分かった。強還元状態の海では鉄イオンはpyriteとして沈殿し、海水から鉄を除去させたと考えられる。一方硫化物は中層水から表層水に貫入した。