9/30/2009

新着論文紹介(2009/9/29)

GRL

1. Reduction of spring warming over East Asia associated with vegetation feedback: Su-Jong Jeong et al., 2009. GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, VOL. 36, L18705.

アジア東部において、分析期間(19822000年)で、冬後半から春への気温上昇の減少が、植生緑化の増加と対照的であることがわかった。植生-蒸散のフィードバックが温暖期での季節的な非対称性をもたらしているのかもしれない。

 

2. Abrupt mid-Holocene onset of centennial-scale climate variability on the Peru-Chile Margin: Chazen et al., 2009. GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, VOL. 36, L18704.

ペルー・チリ沖のSSTなどの復元から、典型的なエルニーニョ、ラニーニャとの関連を示さない100年スケールの振動がみられた。Super-ENSO変化の重要な一部が、熱帯域外で生じているのかもしれない。

 

3. An updated Antarctic melt record through 2009 and its linkages to high-latitude and tropical climate variability: Tedesco et al., 2009. GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, VOL. 36, L18502.

30年分の南極融雪記録から、南半球夏の融解とENSOおよびSAMとの間には、局地的、また陸スケールで、負の相関があることがわかった。この結果は、成層圏のオゾンレベルが回復すると同時に夏のSAMの正のトレンドがおさまるようなときに、融雪の強化が起こりやすいことが示唆された。

 

JGR

4. Increase CO2 uptake due to sea ice growth and decay in the Nordic Seas:

Rysgaard et al., 2009. J. Geophys. Res., 114, C09011.

北極海50地点で、溶存有機炭素は海氷の成長から海水ともに押しのけられ、夏に融解する海氷は、炭酸塩に富んでいるという証拠を報告。モデル計算によると、北極海からグリーンランド海流、ノルディック海へ運ばれる海氷の融解(水)は、表層のCO2分圧や季節的なCO2 uptake の増加に重要な役目をになっていることが示された。

 

Palaeo3

5. Vol. 281, Issue 3-4, p175-376 南米気候特集:低緯度から高緯度まで網羅している。

現在の南米気候、アンデスアイスコア、アンデス(熱帯または熱帯外)の氷河の変動、アンデスに生息する木(年輪)を使ったENSO復元 などいろいろ。

9/22/2009

090922新着論文紹介

Nature

The structural basis of tail-anchored membrane protein recognition by Get3

Agnieszka Mateja1, Anna Szlachcic1,3, Maureen E. Downing1, Malgorzata Dobosz1,4, Malaiyalam Mariappan2, Ramanujan S. Hegde2 & Robert J. Keenan1

 Nature 461, 361-366 (17 September 2009)

新たに合成された膜タンパク質の小胞体へのターゲッティング(局在化)は、重要な細胞過程の1つである。酵母のGet3の状態により、Get3は大規模な再配列を起こし、これによって溝は消失して、溝の疎水表面が隠される。これらのデータは、Get3による膜ターゲッティング中に起こる、尾部アンカー型タンパク質のヌクレオチドにより制御された結合と解離の分子機構を示している。

 

Holocene thinning of the Greenland ice sheet

B. M. Vinther1, S. L. Buchardt1, H. B. Clausen1, D. Dahl-Jensen1, S. J. Johnsen1, D. A. Fisher2, R. M. Koerner2,5, D. Raynaud3, V. Lipenkov4, K. K. Andersen1, T. Blunier1, S. O. Rasmussen1, J. P. Steffensen1 & A. M. Svensson1

Nature 461, 385-388 (17 September 2009)

GIS氷コアのδ 18 Oと、氷床周縁の小さな氷冠から得られた氷コアのδ 18 Oとの比較によって、グリーンランドにははっきりとした完新世の気候最適期があり、これはGIS周縁近くが最も薄くなった時期と一致することが明らかになった。δ 18 Oに基づいた結果は、表面高度の代理指標である氷コアの空気含有量によって裏付けられた。最先端の氷床モデルは一般的に、氷床の広がりおよびGISの高度と面積の範囲と変化を過小評価していることがわかった。

 

Science

Evidence for Obliquity Forcing of Glacial Termination II

R. N. Drysdale, J. C. Hellstrom, G. Zanchetta, A. E. Fallick, M. F. Sanchez Goni, I. Couchoud, J. McDonald, R. Maas, G. Lohmann, and I. Isola

Science 18 September 2009:
Vol. 325. no. 5947, pp. 1527 - 1531

海洋の記録から、最後から2番目の退氷のはじまり(141,000±2500年前)は、地球の赤道傾斜角の変化に原因があることがわかった。

Controls on Diatom Biogeography in the Ocean

Pedro Cermeño1,*, and Paul G. Falkowski1,2,*

Science 18 September 2009:
Vol. 325. no. 5947, pp. 1539 - 1541

珪藻化石群集の記録により、海洋性プランクトンからの珪藻の分散が、地理的バリアによって抑制されていなかったことが明らかになった。

D-Amino Acids Govern Stationary Phase Cell Wall Remodeling in Bacteria

Hubert Lam,1,* Dong-Chan Oh,2,*, Felipe Cava,1,* Constantin N. Takacs,1, Jon Clardy,2 Miguel A. de Pedro,3 Matthew K. Waldor1,

Science 18 September 2009:
Vol. 325. no. 5947, pp. 1552 – 1555

細菌はD-アミノ酸を産生することによって、細胞壁の構成、構造、量、および強度を制御している(すべての生物は、生体を構成する蛋白質をL-アミノ酸のみを用いて生合成しているが、細菌の細胞壁には少量のD-アミノ酸が含まれていることが以前から知られていた。その意義が今回明らかにされた)。

 

Pnas

Higher trends but larger uncertainty and geographic variability in 21st century temperature and heat waves

Auroop R. Gangulya,1, Karsten Steinhaeusera,b, David J. Erickson IIIc, Marcia Branstetterc, Esther S. Parisha, Nagendra Singha, John B. Drakec and Lawrence Bujad

PNAS September 15, 2009 vol. 106 no. 37 15555-15559


Yamazaki(M1)

9/21/2009

1st ACE Symposium 参加報告




今月7日-11日、スペインのグラナダで開かれた1st Antarctic Climate Evolution (ACE) Symposiumに参加しました。

名前の通り、南極の気候・環境・氷床変動 (およびその周辺分野) の研究を行っている研究者がおよそ200名集まりました。


全体的に、古い時代 (Eocene/Oligocene境界) の話が多い印象でしたが、海外の著名な方の発表を聞くことができ、大変勉強になりました。
また、私はポスター発表を行ないましたが、某大御所の方が私の発表に興味を持って下さり、励みになりました!!

このシンポジウムの期間中には、来年1月から予定されているIODP Exp.318 Wilkes Land のミーティングも同時に行われ、乗船研究者の半分くらいとonshoreで研究を行う人が集まり、顔合わせと各々の研究計画を話しました。このようなミーティングが開かれるのは異例なことですが、航海前に知り合いが出来て心強いです。

<写真の説明>
・1枚目
coffee breakのときのポスター会場。皆さんコーヒー片手に熱心に議論しています。余談ですが、このcoffee breakのときに出てきたプチクロワッサンがすごくおいしかった・・・。

・2枚目
敷地内にある塔の上から見た会場 (科学博物館)。地方の博物館なのに、規模が大きくて驚きました (上野の科博より大きいかも)。展示の仕方も、日本と異なっていて、剥製が躍動的!でした。

・3枚目
シンポジウム・ディナーのチケット。開始時間に注目!!グラナダに着いた当初は、“スペイン時間”に苦労しました。時間のひとつをとっても、文化の違いを感じます。

新着論文紹介 (2009/9/22)

☆ Earth and Planetary Science Letters ☆
Volume 286, Issues 3-4, Pages 347-596 (15 September 2009)

Watanabe, T., T. Nakamura, F. W. Nara, T. Kakegawa, M. Nishimura, M. Shimokawara, T. Matsunaka, R. Senda and T. Kawai
A new age model for the sediment cores from Academician ridge (Lake Baikal) based on high-time-resolution AMS 14C data sets over the last 30 kyr: Paleoclimatic and environmental implications
Pages 347-354
高時間分解能のTOCの14C測定を行ない、バイカル湖の堆積物コアの新しい年代モデルを作成した。過去30 kyrのバイカル湖周辺の生産性は東アジアモンスーンとよく一致していた。

Huybers, P. and C. Langmuir
Feedback between deglaciation, volcanism, and atmospheric CO2
Pages 479-491

Gutjahr, M., M. Frank, A. N. Halliday and L. D. Keigwin
Retreat of the Laurentide ice sheet tracked by the isotopic composition of Pb in western North Atlantic seawater during termination 1
Pages 546-555

Balco, G. and D. L. Shuster
26Al–10Be–21Ne burial dating
Pages 570-575
26Al–10Be–21Neでburial dating (サンプルが埋没していた期間を求める) を行った。26Al–10Beよりも26Al–21Neか10Be–21Neを用いたほうが、適用できる年代幅が広がり、埋没期間がより正確に求められる。

☆ Geochimica et Cosmochimica Acta ☆
Volume 73, Issue 20, Pages 5959-6446 (15 October 2009)

Gabrielli, P., F. Planchon, C. Barbante, C. F. Boutron, J. R. Petit, S. Bulat, S. Hong, G. Cozzi and P. Cescon
Ultra-low rare earth element content in accreted ice from sub-glacial Lake Vostok, Antarctica
Pages 5959-5974
東南極ボストーク湖の再凍結氷に含まれるレア・アース元素の濃度を初めて測定した。

Frank, M., D. Porcelli, P. Andersson, M. Baskaran, G. Björk, P. W. Kubik, B. Hattendorf and D. Guenther
The dissolved Beryllium isotope composition of the Arctic Ocean
Pages 6114-6133
北極海 (表層水と鉛直プロファイル) の溶存10Be、9Be濃度の測定を初めて行った。北極海でのBeの滞留時間は800年で、全球海洋平均とほぼ同じであった。

☆ Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology ☆
Volume 281, Issues 1-2, Pages 1-174 (1 October 2009)

Penaud, A., F. Eynaud, J. L. Turon, S. Zaragosi, B. Malaizé, S. Toucanne and J. F. Bourillet
What forced the collapse of European ice sheets during the last two glacial periods (150 ka B.P. and 18 ka cal B.P.)? Palynological evidence
Pages 66-78
北東大西洋で掘削された海洋堆積物コアの花粉分析を行った。二つ前の氷期では、ヨーロッパ氷床の崩壊は170 ka BPに起きており、北緯65度の日射量のピークである150 ka BPより20 ka早かった。

Yu, H., Z. Liu, S. Berné, G. Jia, Y. Xiong, G. R. Dickens, G. Wei, X. Shi, J. P. Liu and F. Chen
Variations in temperature and salinity of the surface water above the middle Okinawa Trough during the past 37 kyr
Pages 154-164
浮遊性有孔虫のδ18Oとアルケノンから、東シナ海のSSTとSSSを復元した。

☆ Quaternary Geochronology ☆
Volume 4, Issue 5, Pages 345-434 (October 2009)

特集“Dating the Recent Past”
最近 (過去500年くらい) のサンプルに適用できる年代測定法 (14C、イベント年代層序、32Si、OSL、U-Th) の特集。

☆ Geophysical Research Letters ☆
Sime, L. C., G. J. Marshall, R. Mulvaney and E. R. Thomas
Interpreting temperature information from ice cores along the Antarctic Peninsula: ERA40 analysis
Geophys. Res. Lett., 36, L18801, doi:10.1029/2009GL038982 (16 September 2009)
南極半島のERA40のデータから、気温の変化に起因する年平均の同位体変動の大きさは、地理的に大きく異なることが示唆された。

9/11/2009

新着論文紹介(09/09/08分(Science,Nature,PNAS)

Nature
Vol 461| 3 September 2009|

News&Views

Nitrogen cycle: Oceans apart
Maren Voss & Joseph P. Montoya
doi:10.1038/461049a

⇒海洋の窒素サイクルに関して、下記のLetterに関連した話。
海洋の2つの異なる窒素サイクルについて、the Arabian Sea とthe Eastern Tropical South Pacific を比較して説明している。

Letters

Denitrification as the dominant nitrogen loss process in the Arabian Sea
B. B. Ward1, A. H. Devol2, J. J. Rich3, B. X. Chang2, S. E. Bulow1, Hema Naik4, Anil Pratihary4 & A. Jayakumar1
doi:10.1038/nature08276

⇒近年話題になっているアナモックス(annamox; anaerobic ammonia oxdation)に関連した話。一般にアナモックスはOMZs( oceanic oxygen minimum zones)において窒素減損過程において主要な役割をしていると言われているが、今回アラビア海においてはアナモックスよりも脱窒素作用が窒素減損過程においてより大きな役割を担っていることが示唆された。

Science
4 September 2009: Vol. 325. no. 5945

Reports

Recent Warming Reverses Long-Term Arctic Cooling
Darrell S. Kaufman,1* David P. Schneider,2 Nicholas P. McKay,3 Caspar M. Ammann,2 Raymond S. Bradley,4 Keith R. Briffa,5 Gifford H. Miller,6 Bette L. Otto-Bliesner,2 Jonathan T. Overpeck,3 Bo M. Vinther,7 Arctic Lakes 2k Project Members†
Science 4 September 2009: 1236-1239.

⇒北極の寒冷化傾向について。北緯60°での気温の代替指標を過去2000年間分統合した結果、中世から小氷期を通して続いている北極の寒冷化傾向が、20世紀の間に逆転していることが示唆された。

PNAS
September 1, 2009; 106 (35)

Environmental Sciences

The physical basis for increases in precipitation extremes in simulations of 21st-century climate change
PNAS 2009 106:14773-14777; published online before print August 19, 2009, doi:10.1073/pnas.0907610106
A. O'Gorman and Tapio Schneider

⇒温暖化に伴う水循環サイクルの変化に関連した話。この論文では温暖化に伴って熱帯や温帯における降水量がどれほど変化するかを予測する上で重要な物理過程を示した。これを用いた結果から現在の気候モデルによる将来予測が不十分な部分について言及している。

Geophysics

Geological sulfur isotopes indicate elevated OCS in the Archean atmosphere, solving faint young sun paradox
PNAS 2009 106:14784-14789; published online before print August 17, 2009, doi:10.1073/pnas.0903518106
Yuichiro Ueno, Matthew S. Johnson, Sebastian O. Danielache, Carsten Eskebjerg, Antra Pandey, and Naohiro Yoshida

9/07/2009

弘前大学


7月下旬に学生2名と卒業生の阿瀬さんとで、弘前大学にお邪魔しました。
南極アイスコアの分割作業をさせてもらうためです。
汚れのついている表面を削り落とし、砕いてボトルに入れて溶かし…
重さを量ってキャリアを入れて…
を繰り返しました。
堀内研究室の方々、特に堀内先生には大変お世話になりました。
作業中も楽しかったです。
街ではねぶた祭りの準備も行われているようでした。

8月のマシンタイムから、測定も始まりました。

新着論文紹介(2009/9/8)

☆GRL☆

Dynamic response of oceanic hydrates to sea level drop
Liu, X., and P. Flemings (2009), Geophys. Res. Lett., 36, L17308, doi:10.1029/2009GL039821.
→海水準低下に伴う、海底メタンハイドレートの挙動を、多相流体・熱流モデルで数値シミュレーション。海水準低下→斜面崩落→メタンガス漏出という因果関係が示された。

Variable oceanic influences on western North American drought over the last 1200 years
Conroy, J. L., J. T. Overpeck, J. E. Cole, and M. Steinitz-Kannan (2009), Geophys. Res. Lett., 36, L17703, doi:10.1029/2009GL039558.
→北米の旱魃は、熱帯東太平洋が寒い時に起こりやすいとされるが、長期のデータはなく不明だった。熱帯東太平洋SSTを1200年分復元して比較すると、関係ある時とない時があり、複雑そう。


☆JGR-Atmosphere☆

Mineral dust and elemental black carbon records from an Alpine ice core (Colle Gnifetti glacier) over the last millennium
Thevenon, F., F. S. Anselmetti, S. M. Bernasconi, and M. Schwikowski (2009), J. Geophys. Res., 114, D17102, doi:10.1029/2008JD011490.
→アルプスの氷床コア中の、ブラックカーボンの量・炭素同位体組成(d13C)、鉱物ダストを、過去1000年にわたり分析。ヨーロッパの農業の盛衰や、大気循環の変動などと絡めて議論している。

Isotopic ratios in gas-phase HNO3 and snow nitrate at Summit, Greenland
Jarvis, J. C., M. G. Hastings, E. J. Steig, and S. A. Kunasek (2009), J. Geophys. Res., 114, D17301, doi:10.1029/2009JD012134.
→降雪後に雪中の硝酸(気相)の窒素・酸素同位体組成がどう変化するか、グリーンランドのSummitで測定。


☆JGR-Solid Earth☆

Preferential Mode of gas invasion in sediments: Grain-scale mechanistic model of coupled multiphase fluid flow and sediment mechanics
Jain, A. K., and R. Juanes (2009), J. Geophys. Res., 114, B08101, doi:10.1029/2008JB006002.
→メタンハイドレートの粒子スケールモデリングによると、メタンガスは堆積物に割れ目を作ることで、ハイドレートとして固まらず速やかに海底へ抜けてしまう部分があるらしい。気候変動に対するメタハイの応答は、従来の予想よりもずっと大きいかもしれない。また、CO2地中貯留でも、CO2が上に抜けていく可能性があるらしい。


☆Paleoceanography☆

Florida Straits density structure and transport over the last 8000 years
Lynch-Stieglitz, J., W. B. Curry, and D. C. Lund (2009), Paleoceanography, 24, PA3209, doi:10.1029/2008PA001717.
→フロリダ海峡での8000年間の密度構造変遷を、堆積物コアの有孔虫d18Oから復元。


☆Geochimica et Cosmochimica Acta☆ 73(19) 1st Oct 2009

Fractionation of silicon isotopes during biogenic silica dissolution
Pages 5572-5583
Mark S. Demarest, Mark A. Brzezinski, Charlotte P. Beucher
→生物源シリカのケイ素同位体組成から過去のケイ素循環を探る研究が最近盛んだが、シリカ溶解に伴う同位体分別はよく分かっていなかったので、室内実験。そこそこ影響がありそう。


☆Global and Planetary Change☆ 68(4) September 2009

特集号
Fluvial sequences as evidence for landscape and climatic evolution in the Late Cenozoic: a synthesis of data from IGCP 518
Edited by Rob Westaway, David R. Bridgland, Rajiv Sinha and Tuncer Demir


☆番外編☆

Geoengineering the climate - Science, governance and uncertainty-
http://royalsociety.org/displaypagedoc.asp?id=35094
The Royal Society, September 2009
→地球温暖化への対策として、気候を人工的に制御する「地球工学」がたびたび着目されるが、英国王立協会が「Geoengineering the climate」なる報告書をまとめ、各紙を賑わせている。規模は違うが、IPCC報告書みたいな感じか。大雑把には「色々と副作用が起こりえて危険かもしれないが、排出削減に失敗していざとなれば使えるかも。さらに研究を進めて、効果と費用をきちんと評価していくべき」という話。

担当:山口保彦(M2)@シャルルドゴール空港(飛行機の乗り継ぎ待ち時間中)

9/06/2009

『チェンジングブルー』講談社科学出版賞授賞式

JAMSTECの大河内さんが書いた、古気候・古海洋学の名著『チェンジングブルー』(下記リンクに詳細)が、平成21年度講談社科学出版賞を受賞し、9/4に授賞式がありました。横山先生と海洋研の金原さんが参加。「『チェンジングブルー』は、私も講義等々で推薦していて、高い評価を受けて喜ばしい。大河内さん、おめでとうございます」(横山先生)

『チェンジングブルー 気候変動の謎に迫る』
大河内直彦、講談社、2008/11

ミニOB会


少し前の話ですが、横山研1、2期生の卒業生から横山先生に突然電話があり、暑気払いをするとの事。あいにくお盆のため、メンバーがそろっておらず、ミニOB会となりました。皆さん、商社、金融、流通関係の会社でそれぞれ立派に活躍しています。「久しぶりに元気な様子を見る事ができて、楽しい時間だった」と横山先生。

9/01/2009

新着論文紹介(2009/9/1)

■Chemical Geology
1. A new procedure for separating and measuring radiogenic isotopes (U, Th, Pa, Ra, Sr, Nd, Hf) in ice cores
Sarah M. Aciego et al., 2009, 266, 203-213.
アイスコア中の放射性核種 (U, Th, Pa, Ra, Sr, Nd, Hf) の分離と測定の新しい方法について

■GRL
2. West Antarctic paleotopography estimated at the Eocene-Oligocene climate transition
Douglas S. Wilson and Bruce P. Luyendyk, 2009, 36, L16302.
Eocene-Oligoceneの南極氷河の発達は、テクトニックな伸張、侵食、堆積作用をモデル計算に加えると、南極大陸の10-20%の陸は、海水準より高かった。

■Marine Geology
3. Late Pleistocene–Holocene evolution of the northern shelf of the Sea of Marmara
M.N. Çağatay, 2009, 265, 87-100.
The Sea of Marmaraの大陸棚北部上の海底地形マッピングや有孔虫などの同位体分析等から、過去160 k間の海水準エクスカーション、Maditerraneanと黒海間の水交換、塩分振動の証拠が見つかった。

■JGR
4. Freshwater transport at Fimbulisen, Antarctica
Graham J. Walkden et al., 2009, 114, C08014.
Weddell海南部の水路学的な調査から、Antarctic Slope Frontは大陸棚崩壊による流れを維持し、一方浅いCoastal Currentは氷河前線に平行して流れることがわかった。

■PALAEO3
5. Response of calcareous nannofossil assemblages to paleoenvironmental changes through the mid-Pleistocene revolution at Site 1090 (Southern Ocean)
Maria Marino et al., 2009, 280, 333-349.
南大洋(ODP Site1090)のコア中の石灰質微化石量の定量分析から、mid-Pleistoceneの、亜南極前線の移動などがわかった。Early Pleistoceneでは、前線は北方へ、寒氷期では、南方へ移動。

6. Paleotemperature response to monsoon activity in the Japan Sea during
the last 160 kyr
Kazuho Fujine et al., 2009, 280, 350-360.
過去160 kyr間の日本海の古水温をアルケノン飽和度に基づいて復元。

7. Early to mid-Pleistocene ostracod δ18O and δ13C in the central Tibetan Plateau: Implication for Indian monsoon change
Zhangdong Jin, 2009, 280, 406-414.
チベット高原中央部の貝虫類のδ18O and δ13C分析によると、2.01-0.84 Myr 間において、δ18O and δ13Cはインドモンスーンの変化に同期していた。MPT時のδ18O and δ13Cの振動は、大陸氷床の拡大に同期している。

■Quaternary international
大陸棚、海水準と環境に関する特集号。
Edited by Norm R. Catto, Wyss W.-S. Yim, Fabrizio Antonioli and Yusuke Yokoyama

■QSR
Holocene-Latest Pleistoceneの山岳氷河変動に関する特集号
Edited by P. Thompson Davis, Brian Menounos and Gerald Osborn

担当:Shiroya