こんにちは、平林です。
4/17-5/9にかけて、研究調査船SONNE号に乗船し(RV SONNE expedition 256)、
東オーストラリア沖(タスマン海・Great Barrier Reef・Cape York)の海洋調査に行ってきました。
その時の航海の様子をお伝えします。
この航海ではドイツ・Bremen大学、カナダ・Dalhousie大学、オーストラリア・Sydney大学およびJames Cook大学、中国・Xiamen大学、オランダ・Naturalis Biodiversity Center、日本・東京大学および秋田大学と6カ国8研究所におよぶ多国籍の研究者たちが乗船していました。日本からは横山先生、私、そして秋田大学のスティーブが参加し、横山研に滞在したことのあるMahyar Mohtadi先生(Bremen大学)、Jody Webster先生(Sydney大学)も乗船していました。
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Scientist集合写真 |
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右から横山先生、Jody先生、スティーブさん、筆者 |
今回の航海はニュージーランド・オークランドより出港し、東オーストラリア沖を調査、オーストラリア・ダーウィンにて下船という航路でした。
17日朝に出港し、参加した研究者たちの顔合わせ、船内の案内があった後、緊急事のための避難訓練が行われました。
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オークランド港。奥に見える船がSONNE号、手前の車は全て日本より輸入されたTOYOTA! |
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SONNE出港とともに、オークランド港には虹がかかる。幸先良し。が、しかし、この後筆者は船酔いに悩まされることになる… |
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避難訓練は実際に救命胴衣を着けて行う。写真右はMahyar先生。 |
はじめの5日間はオークランドからタスマン海を横断し、オーストラリアに向かいました。その間、横山先生と私は8時間毎に海水中のウラン同位体比(d234U)測定用に表層海水の採水を行いました。同じ海水をDalhousie大学も採取しており、各々分析項目は違いますが、お互いの分析結果を比較することでタスマン海の海洋環境について議論を発展させることができると期待しています。
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採水システム |
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Dalhousie大学の研究者と一緒に採水 |
オーストラリア東沖に到着後、いよいよ本格的に海底探査・海底堆積物の採取・CTDによる海水採取を開始されました。これらの調査は下記のような方法で採取・サブサンプリングを行いました。
⒈ドレッジ
写真のようなチェーンで結ばれた箱型の容器を引きずり、海底の岩石などを採取する方法。今回は数個のサンゴ藻が採取され、すぐに実験室にて表面観察し、議論が行われた。
2. グラビティコア
海底にパイプを刺し、海底堆積物を採取。今回の航海では最長8.5mのコアの採取に成功した。採取されたコアは1mごとに切断され、それをさらに半割し、一方はアーカイブハーフとしてコアの記載と写真撮影をされ、もう一方ワーキングハーフとしてシリンジを使って4cmごとにサブサンプリング、各研究所によって分析される。
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コアは1mごとに切断 |
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とったどー! |
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半割 |
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シリンジを使ってサブサンプリング |
3.マルチプルコア
海底堆積物の表層部を採取できる。円柱状のチューブで一度に10本採取できる。採取された堆積物は1cmごとにスライスされ、プラスチックのペトロディッシュに保存する。一度に10本の堆積物が採取されるので、この作業はほぼ全員で一斉にデッキで作業する。
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サブサンプリングの方法を伝授される横山先生 |
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うまくサブサンプリングできてご満悦のスティーブと筆者 |
4. ボックスコア
マルチプルコアと同様に海底堆積物の表層部を採取できるが、これはその名の通り箱型になっていてごっそり海底堆積物を採取でき、岩石やサンゴ藻も採取できる。採取されたサンプルは篩で大きさごとに分類され、顕微鏡で海底に堆積した炭酸塩生物殻などを観察。
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ボックスコアによって採取された堆積物。海底の様子がわかる。 |
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顕微鏡で浮遊性・底生有孔虫を見つけるスティーブ |
5. CTDによる海水採取
CTDを使って海水の水温、塩分、溶存酸素濃度、クロロフィル濃度について深度プロファイルを作成できる観察装置。またこれを使って深度別に採水もできる。深度が3000mあるような海域では、このCTDを海底に下ろして船に引き上げてくるまでに2時間から3時間かかる。
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海から引き上げられるCTD |
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CTDで得られる水温・塩分などの深度プロファイル |
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採取中 |
サンプリングの合間には、今後のサンプリングの予定や共同研究についてサイエンスミーティングが行われます。
休憩時間にはデッキで景色を眺めたり、写真撮影したり、卓球やトレーニングジムで運動したりなどなど、思い思いに過ごしていました。
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星を追うスティーブ |
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食後の運動、卓球! |
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島を発見! |
南太平洋の美しい空と海、貴重なサンプル、フレンドリーな研究者たちに囲まれ、あっという間に3週間の航海が終了してしまいました。
今回の航海ではサンプルも当初の予定よりも多く取ることができ、今後サンプルの化学分析を各研究所が進めていくことで、今回の海域の過去の古海洋環境がどのようなものであったのか、議論が発展していくことが期待できます。
今後も引き続き、このメンバーで国際共同研究を進めていけることが楽しみです!