IODP#310で採取されたタヒチ沖のサンゴ化石コア試料の分析による最終氷期の南太平洋の古海洋環境復元
Paleoceanographic reconstructions around Tahiti in the Last Glacialbased on element analysis of fossil coral from IODP#310
原田まりこ(M2)
過去や現在の熱帯域の海洋環境を示すより多くのデータを得ることは、気候変動の復元を行う上で大変重要である。2005年秋、最終氷期最盛期(LGM)以降の海水準変動や海洋環境の復元を目的として南太平洋タヒチ沖(南緯17°西経149°)において統合国際深海掘削プロジェクト(IODP)の310番目の航海が実施され、37孔のべ630mのコア掘削試料が得られた。試料はサンゴ化石を含んでおり、本研究ではこのサンゴ化石の酸素同位体比やストロンチウム・カルシウム比、またいくつかの微量元素の測定から海面表層水温(SST)やpHを推定し、また周辺海域の湧昇や河川流入などについて考察することで、古海洋環境の復元を行うことを目的としている。
本研究の分析には大型の塊状群体を形成するため年輪が明瞭で古気候復元に優れているとされるハマサンゴ(Porites spp.)という種のサンゴの化石を用いた。すべてのサンゴ化石について続成をチェックするためXRD測定を行い、変成を受けていないと判明した試料についてのみ加速器質量分析器(AMS)を用いて年代を測定した。酸素同位体比と ICP-AESによるストロンチウム・カルシウム比は、それぞれの試料の成長軸方向に沿って0.4mm毎にマイクロサンプリングを行ったサンプルを測定して得られた。ICP-MSによって測定したバリウム、ウラン、マグネシウム、ストロンチウムそれぞれのカルシウムに対する比は、試料をバルクサンプリングしたものを測定して得たものである。
今回のセミナーでは、主に水温指標となるストロンチウム・カルシウム比とウラン・カルシウム比の測定結果とその考察を紹介した。今後はこれまでの測定(酸素同位体比、ストロンチウム・カルシウム比、バリウム、ウラン)を進めることに加え、ボロンの同位体比からpHを復元することとその測定のための続成のさらに細かいチェックなどをメインに進める。